近江塩津の謎の穴
世の中は「謎」に充ち溢れております。
われら道路趣味界隈でも、ちらほら「謎」の物件が取り上げられています。
トマソン的な橋やトンネルから、用途がわからない穴など多岐にわたる謎が眠っています。
今回は僕の趣味を知った知人が紹介してくれた用途のわからない謎の穴をご紹介します。
R氏は営業の途中サボろうと(笑)、近江塩津駅近くの集落から伸びる細い道に入り、その奥の広場に行こうとしていたそうです。
しこたま昼寝して(笑)帰ろうと思い方向転換をした時、彼は見たそうです。
見たことも聞いたことも無い場所に古いトンネルを!
その後、怖くなった彼はしばらく誰にも言わず(言えず)黙っていたそうですが、僕の趣味を知って初めて打ち明けてくれました。
その話を聞いた僕は机上調査を始めましたが、近江塩津に現存する古い隧道の存在は確認できず・・・。
それなら行ってみるしかないと奮い立ち、R氏に「行って来る」と告げ、探索に出かけました。
彼からの言葉は「マジ怖いから入るなよ!」
バカだな、お前は・・・、
「そう言われたら意地でも入りたくなるのが道バカだよ!」
そんなアホなやり取りを交わし出発しました(笑。
それではレポスタート!
ここは国道8号、近江塩津駅より南に200mほどの交差点「塩津中交差点」です。
写真上部で空を切り裂いているのはJR湖西線、近江塩津駅は湖西線の終着駅で、北陸本線への乗り換え駅としてこの周辺では有名です。
そしてR氏が入っていったという路地がこちら・・・。
う~ん、サボりには都合好さそう(笑。
奥に穴発見!
・・・ではないですね。
アレにビビってたらに日常生活に支障をきたすし・・・。
これはいわゆるボックスカルバート。
JR北陸本線の築堤の下をくぐるための箱上の埋設物です。
人工の築堤をくぐるという意味で、トンネルとは差別化される道路構造物ですね。
おでこの所に貼り付けられたプレートに「新塩津中暗きょ」と銘打たれていました。
これがこのカルバートの名前で間違いないでしょう。
く、黒い・・・。
白の世界に覗く異次元に連れていかれるような黒。
あれこそR氏がびびるあまり、新塩津中暗きょ内でミラーをこすった曰くつきの穴だ!
しかし近づいてみたらなんてことはない。
確かに古そうですが、この程度なら僕は鼻歌歌いながら通り過ぎれます。
隧道に関して、僕の恐怖心は常人よりかなり鈍感です。
R氏・・・、僕を甘く見過ぎじゃないかい?
しかしこの土かぶりの少なさ・・・
僕の仮説が正しければ、こいつの正体は反対側から見たら一目瞭然のはず。
というか実は、地図上で確認した時点でなんとなく見当はついてたんですが(汗。
まぁ道路的には廃には違いないってことで・・・。
洞内は綺麗なものですが、入口付近は池と化していたので廃物件には間違いなさそう。
あと、直線ですが意外と長い。
50mはありそうです。
抜けた先はこんな感じ。
どうも完全に廃道化しているわけではなく稀に人は通るのか、道の痕跡は大いにとどめています。
さて僕が見たいのはこっちじゃない。
振り返り見上げたそこに見えたものは・・・
やっぱりこうなってたか!
これは北陸本線の上り線。
北陸本線はこの区間、上り下り別の単線として敷設されているのです。
つまりこの穴の正体は・・・。
アーチカルバート
今となってはあまり使われないアーチ式の暗きょがその答え。
もし新線建設当時のものなら少なくとも昭和32年以前の竣工であることは間違いないこの物件。
しかし新線建設の経緯を考えると、戦前の可能性も大いにあり得ます。
北陸本線が複線化された際に作られた下り線を越えるのが「新塩津中暗きょ」
ということはこちらは「旧塩津中暗きょ」と呼ぶのが筋でしょう。
今、このアーチカルバートを利用する人は年間どのくらいなんだろう。
昭和32年当時はもっと利用が多かったのでしょうか?
廃アーチカルバートの上は当然のごとく、北陸の大動脈である北陸本線が堂々と通っています。
同じ線路関係にもかかわらず、現役と廃が同居しているこの旧塩津中暗きょ。
僕は大好きな場所となりました。
以上、「近江塩津の謎の穴」改め「旧塩津中暗きょ編」
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