大沙川隧道
夕闇が迫る湖南市。
旧東海道にも夜の帳が下りてきます。
街道筋らしい街路の巨木もどこか不気味。
それもこんな立地ならなおさらかもしれません。
絵になる隧道だなぁ・・・。
これは夕暮れもいいアクセントです。
大沙川隧道(おおすなかわずいどう)
「おおさかわずいどう」や「吉永のマンポ」とも呼ばれ親しまれています。
マンポは以前、六把野でお話しした「ねじりまんぽ」の「まんぽ」と同義、小規模な隧道を指します。
明治17年竣工
滋賀県下最初の道路隧道でもあります。
総石造りに意匠の施されたポータル。
100年以上が経過した今でも一切の綻びは見られません。
由良谷川隧道でも書きましたが、現在の基準で言うなら隧道ではなく水路跨道拱橋が正解かと思います。
ただ作業としては天井川の下を「掘っている」わけなので、隧道と変わらないでしょう。
人工物を穿つのが暗渠、自然物を穿つのが隧道、だとすれば川は自然物です。
そこで迷ったのか、扁額には「隧道」の文字は無く河川名だけとなっています。
ここでは「大沙川」と書かれていますね。
迫受石とピラスターを合わせたような独特のアーチ環。
この構造は個人的には初めて見ました。
装飾的な意味合いが強いんでしょうが、なかなかお洒落さんですね。
そして狭いのは分かるけど石アーチに虎模様やめれ!!
この意匠は、かなり特殊な形状の迫受石(せりうけいし・隧道断面が曲線から直線に変わる位置に置かれる石)という扱いのようですね。
隧道内部にもでっぱりとして残っていました。
そして微妙に釣鐘型だな、この隧道。
金ヶ崎隧道などのようにわかりやすくはないですが、下に行けばいくほど広がっています。
唯一残念なのはやはり翼壁。
しかしまぁここが一番崩れるんでしょうよ。
構造的にはただの石垣ですからねぇ。
石っぽくしてくれてあるだけマシと言えます。
大沙川も枯れ川状態となっているらしく、もしかしたらここにも工事の手が入るかもしれません。
しかしできる限り、完成時の姿を残しておいてほしいものです。
ただこの隧道にはこの姿が維持できる希望があります。
それは隧道上、つまり天井川の築堤部分。
弘法杉(こうぼうすぎ)
町指定文化財の巨木。
現在は湖南市指定文化財となっているようです。
詳しくは看板を読んでいただければわかると思いますが、こいつがある限りその下の隧道は安泰と言えそうです。
実際はもう夜に突入している暗さです。
どうか、大沙川隧道よ。
末永くご健勝で・・・。
以上、大沙川隧道編
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