杉本隧道

滋賀県北部、長浜市に今回紹介する知る人のみぞ知る隧道があります。

その名は

杉本隧道(すぎもとずいどう)


福井滋賀県境エリアには数々の長老たちがいるが、この隧道はそんな隧道たちとは一線を画しているのです。

あえて呼ぶなら、

一匹狼

そんな言葉が似合う杉本隧道。

所在する滋賀県道284号杉本余呉線全線レポも合わせていってみます!

ここは滋賀県道284号杉本余呉線の終点、国道365号との交差点です。

目指す杉本隧道は起点直後にある為、レポの為にあえて逆から攻めてみます。

まぁ滋賀県の一般県道(特に長浜市付近)にはっきり言って期待はしてないけどさ。

いきなり醸してるな!

出鼻からワクワクさせてくれるじゃないか!

そしてぶち当たりました、この交差点。

左は滋賀県道283号中之郷停車場線、県道284号は右です。

滋賀県道283号はウツロギ峠編でも紹介した、駅の無い停車場線です。

かつてこの交差点付近に中之郷駅という柳ヶ瀬線の駅があったことから付いた名前ですが、

現在では別の重要な役割を担っています。


それは・・・、

この交差点以前の県道284号険道区間をバイパスする役割。


つまり杉本隧道にただ行きたい場合、ここまでの区間を走る必要は全く無し。

左に曲がって200mで終点のある国道365号に着いちゃいます。


もう一つの県道にまとめちゃっていいんじゃないでしょうか?

ややこしいよ。

だから県道284号の矢印案内板、2枚も重ねられてるし。

これは初めて見たよ・・・。

右折後はしばらく快走区間に突入です。

明らかに山に向かっていますね。

しかし目指す隧道はまだ先。

実は杉本隧道に至るまえに一つ峠を越さなければならないのです。


その名は

中山峠(なかやまとうげ)

敦賀市の馬坂峠のように今はほとんどその名を知る者のいない峠です。

そして中山峠を通過。


完全に余談ですが、

「中山峠」という峠は全国に無数にありますが、

その麓の集落の名は「中野」「中田」「中郷」が非常に多いです。

要するに僻地と町中を隔てる山の峠っていう由来です。

福井県内にも1つありますね。


似て非なるのが「山中峠」。

山道の中間地点の峠という由来が多い峠名です。

これも福井県内に存在します。

峠名の由来も調べてみるとなかなか面白いですよ。

現在この峠付近はスキー場や野外体験施設等が軒を連ねています。

その中でも「ウッディーパル余呉」は僕も何度もお世話になっているキャンプ施設。

ロングツーの方はご利用されてみてはいかがでしょうか?

中山峠を下ると滋賀県道285号中河内木之本線との合流に入ります。

実はこの日、最大の目的はこの県道285号でした。

ただ・・・、大規模な土砂崩れの影響で無念の工事中!

回復はいつになるのか・・・。

僕は不吉な予感がしています。

わざわざ僕が走る県道なので、道は当然アレです。


さらに山中をくねくね走り国道365号と並走しているので、はっきり言って「無くても困る人の少ない県道」なのです。

かつて何度も見た現役県道の放置プレーの予感が・・・。

(後日探索しました!詳しくはこちらです!長編注意!)

そしていよいよ県道285号との合流を離れる交差点に差し掛かります。

直進は県道285号、右折が県道284号です。

ここを曲がると・・・

う~ん。

これはくるな。

隧道の気配だ!

集落を過ぎるといよいよこの雰囲気。

鬱蒼としてきました。

ガードレールやカーブミラーなんて気の利いたものはありません。

昔ながらの街道をとりあえず舗装しました。

そんな感じです。


しかしこんな素敵な山道区間も長くは続きません。

杉本隧道、着。

僕はこの隧道4,5回目ですが、相変わらずな陰鬱な雰囲気。

何度も廃隧道に入ったり、閉塞隧道に入ったりしていますが、なぜかこの隧道のこの雰囲気は、正直苦手です。


廃隧道より陰鬱な現役隧道。

そんな称号をこの杉本隧道に贈りたい。

さて隧道に入るまえに周辺探索。

気にしなければ見つける人も少なそうな場所に記念碑がありました。

実はこの隧道大きな謎が3つあるのです。


1)西口と東口で扁額の名前が違う

今いるこの西口の扁額には「丹生隧道」と刻まれています。

東口には「杉本隧道」。

どういう経緯でこんなことになっているのか、謎です。


2)竣工年が違う

プレートには昭和26年竣工と刻まれているのですが、

扁額や資料には大正7年竣工となっているのです。

どっちが正解?


3)隧道内の内装が酷過ぎる

実は今回懐中電灯を忘れたことにより内部での撮影が出来なかったのですが、はっきり言ってこの隧道の中は酷い。


コンクリート巻き、鉄筋の支保工、コンクリート吹きつけ、煉瓦巻き。

展覧会かと突っ込みたくなるくらいコロコロと施工が変わるのです。

さらに途中で断面のサイズが変わることも大きい。

小さい断面が突然大きくなる分にはいいけど、

大きい断面が小さくなるのは非常に危険です。


さらに本来美しいはずの煉瓦巻きも、なんかグダグダ感が漂う積み方。

よく現存して現役でいるなと言うの率直な感想の隧道なのです。

照明はあれど、点いていない。

内部は湿気に満ちていて、雨天時には隧道内から霧が噴き出す有様です。

あれは不気味を通り越して、妖気を感じる姿。

今日は晴天なので、反対側を見通せます。

さて、隧道を通過して東口の坑口です。

扁額には確かに「杉本隧道」の文字。

しかし無駄にでかいな。


ここで謎2についての一つの考察ですが、

これだけ内部状況が酷い状況と言うことは、何度も補修されていることでしょう。

資料と扁額に書かれているのですから、

恐らく竣工年は大正7年が正解でしょう。


そしてそのころには恐らくプレートなんて概念はなかったと考えられます。

だとすれば、大規模な補修工事が行われた際に、

その年を竣工年としたプレートを設置したとは考えられないでしょうか?


恐らく大正時代この隧道は人馬用程度の隧道だったはずでしょうから、

車道化する際に拡幅した考えられます。

こう考えると時期的にもモータリゼーションが始まった時期と合致する竣工年は納得です。

こんな考察いかがでしょうか?

さて角度を変えた写真ですが、この位置は実はものすごい水音がしています。

滝とまでは言いませんが、石清水とは言い切れないような音です。


さらに先にも挙げた話ですが、

「雨天時には隧道から霧が噴き出している」

これは隧道内でかなりの漏水があるという証拠。

事実この日も、隧道内はワイパーが必要なほどの量の水滴が落ちてきました。


これは謎3の解決につながりそうな問題です。

おそらく大規模補修後しばらく、煉瓦→素掘り→煉瓦というような隧道であったと思われます。

それがこの漏水が原因でじわじわと感覚を開けて崩落が異常が起きたのではないでしょうか?


何より鉄筋の支保工は間違いなくそうでしょう。

じゃなければ、あの場所だけ鉄筋を入れる理由が見つかりません。

さらにサイズが変わる断面も、狭くなった分コンクリートを厚く巻いているとは考えられないでしょうか?

そして漏水が比較的少ない東口付近のみ煉瓦巻きが残ったと考えれます。


最後になんかしっくりこない煉瓦巻きですが、これはしっかり資料に書いてありました。

実はこれ、職人でもない隧道工事者たちのオリジナル作品らしいのです。


一般的に煉瓦には様々な積み方があります。

「イギリス積み」や「長手積み」が有名ですが、ここのは「素人積み」と言っておきましょう。

まぁ大正時代の話ですから、

そんなこともあったのでしょう。

そしてこの隧道最大の謎「扁額名の違い」。

これははっきり言って。

わかりませんでしたorz


すいません、すいません、あ、石投げないで!

仮説にも考察にもなってないんですが、持論を言わせてもらえれば、恐らく煉瓦すらオリジナルで積んじゃうようなバイタリティの人たちが掘った隧道なので、「隧道の名は1つだけ」という常識が今ほどなかったんじゃないかと考えています。

つまりこの隧道の名は「杉本隧道」「丹生隧道」、2つとも正式名称。

ってことでいいんじゃないかと。

もしご存知の方、訂正がある方がいらしたらご一報をお願いします!

さて隧道を離れて下ってくると、

この県道最狭区間が登場。

そしてさらに言うなら、路面でこぼこ過ぎ。

てぃーだくんで普通に走ってて底磨るなんてそうないんだけどなぁ・・・。

つきあたりますがここはまだ終点ではありません。

ここを左折すれば、ゴールはもうすぐそこ。

まぁ普通の「裏道」ですよね。ただここは県が認めた道の起点。

場違いな融雪装置が県道を主張しています。

そしてゴール。

ここが滋賀県道284号杉本余呉線の起点、国道303号の交差点です。

国道303号と言えば、酷道マニアにはあまりにも有名なあの峠、八草峠(はっそうとうげ・レポ未)もこの近くです。

このレポはいつか必ず!


しかし東西で違う扁額の謎は釈然としません。

どなたかどんな情報でもいいので教えていただければ嬉しいです!


以上、杉本隧道編

この道往けば act2

福井県を中心とした。酷道、廃道、旧道、峠、隧道の探索ブログ

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