谷田部坂 中編

沢と化した道を跳ね回った僕は、いよいよ峠への最後の上りに差し掛かります。

探索日は10月でしたが、晴天のこの日は気温が高く、思わず上着を脱ぎました。

今年暑かったなぁ・・・。

手入れが行き届いた杉林。

おそらくこれがこの峠道の生き残るすべなのでしょう。

昔風にいうなら杣道。

林業用のと歩道として、今を生きているということが推測できます。

程なくしてそれは現れます。

もともと260m程度のトンネルに対応する峠ですから、それほど歩かずともたどり着けるのは予想できていました。

谷田部坂、着。

標高110m、海に近いこともあり標高は低めです。

峠にはかつてお地蔵様があったという話は聞きますが、現存はしません。

これだけ道がきれいに残ってるならあってもおかしくないんだけどなぁ。

惜しいことです。


しかしちょうど逆光の峠を越えることができたのはよかった。

紅葉前の緑の空、ただ純粋に美しい光景です。

明らかに人工的に並べられた石が残っていました。

盛時の遺構としては唯一かと思います。

このデカい石をここまで運ぶのはさぞ重労働だったことでしょう。

重要度は椿峠勢峠といった丹後街道の峠には劣りますが、地域にとっては重要な峠。

地元の峠への思いが伝わります。

反対斜面には一つだけぽつんと残った石・・・。

置いてけぼりにされましたか??

それとももとからここに転がってきたのか・・・。

ちょっと寂しげでした。

こうしてみるとかなりⅤ字に切れ込んだ峠だということがわかります。

僕はこういう意識して来なければ、一生来ることはないであろう峠が大好きです。

こういう峠では5分以上をかけてあらゆる角度で写真撮りまくってます(笑)

いいよね、こういう峠・・・。

さて楽しい時間はここまでです。

ここから先はある意味試練。

なにせどこに降り着くかわからないのです。

まぁ地形図等である程度の予想は立ってますが・・・。

不安材料もありまして・・・。

こちら側にも小規模な切り通しがありました。

素晴らしい保存状態に感服しますね。

しかし今写真見てたら気づいたんだけど、切り通し右側にも道が見えるような・・・。

まさかの旧旧道??

あり得るだけに…!!

なんかさっきの写真から、やんわり道が見える気がする。

心霊写真現象(ないものがあるよう見えるアレ)か?

しかしこの写真、手前から奥に行く本線の他に、左から右へ下る道との交差点に見えませんか??

なぜこれを現場で気づかなかった!!!

こうなってくるともう、何もかもが道に見えてくる・・・!

この写真の解説は次回に回し、こちらではちょっと歴史解説を・・・。


やはりこの道に馬車が走ったような歴史はありません。

人馬用の街道の枝道だったということがわかっています。

あの道幅は相当優良路線だと思うんだけどなぁ。


そしてこの道が使われなくなった時期ですが、初代谷田部隧道の竣工が大正13年のことだったとの記録が残っていることを考えれば、やはりこの時期を境に往来は激減したと考えるべきでしょう。

そこから細々と生きながらえて今に至る道。

しかし峠の美しさは決して衰えていませんでした。


次回、俺は無事に車に戻れるのか!?

この道往けば act2

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