利椋峠 悪夢の始まり編

ある意味今回紹介する峠は、近代福井県史の道という分野では非常に重要なものとなるかもしれません。
このブログでは福井の峠、隧道を取り上げてきました。
それは明治を境にその対象が峠から隧道へ移行しているのがわかると思います。
交通の主体が徒歩から汽車へ、汽車から自動車へ変わるにしたがって、そのルートも変わっていくのです。

鹿蒜道から北国街道へ、北国街道から北陸本線へ、北陸本線から国道8号へ。
そのルートは年代により変化していきます。
先述の4本のルートを地図上に描き出すとこうなります。
やはり越前海岸の峻嶮は容易く通行を許さず、ほとんどの道が山側に活路を見出しています。
そこにようやく道ができたのは明治9年、県内最古の隧道が開通したときでした。

阿曽隧道

越前海岸黒崎を貫いた隧道。
明治9年にこの地域には概ね3つの道がありました。
北国街道、古代北陸道、そして鹿蒜道。

しかし北国街道は栃ノ木峠が険しく、また距離も遠いので、敦賀から利用するのは現実的ではありません。
古代北陸道も木ノ芽峠が険しく、そして荷が多い場合水運が使えないという問題がありました。
そんな時に活躍していた鹿蒜道。
古代北陸道と並んで奈良時代からその名の残る古道です。
しかし明治9年、その命は絶たれました。

その下手人こそ阿曽隧道。
こいつによって鹿蒜道は国道8号の前身である「春日野道」に完全にとってかわられたのです。

前振りが長くなりました。
この時に刺されたトドメこそ、今回ご紹介する峠。

利椋峠(とくらとうげ)

悲運の峠、ぜひご覧ください。
レポスタート!
ここが現在の国道8号。
敦賀の冬としては気持ち悪いくらい雪の少ない今年は、絶好の探索チャンスです。

僕の目指す先は横断歩道の先。
あの急勾配の上り坂です。

挙野地区(あげのちく)

この峠の敦賀側の麓に位置する集落です。
東浦に点在する集落の中では最も山沿いに位置しています。

けっこうな勾配だなおい。

これは明らかに車道を想定して創られた道ではありません。
徒歩道。
それもかなり古い古道に見られる作り方です。
田んぼの石垣にはお地蔵様がいらっしゃいました。
これはウツロギ峠のお地蔵様を思い出しました。
地区としては同じ東浦地区。
共通点が見られます。
そういえば、スタート直後のバス停の横にもこんな石像が。
やはり難所だったのでしょう。
難所に石碑石仏はつきものですからね。
しかしまさかこの数時間後、真剣に神に祈るとはこの時は露知らず・・・。
強烈な上り坂はその勾配を緩めることなく続いていきます。
地図読みでは330m程のであるはずの利椋峠、海岸線沿いからとはいえ、このペースで登ればすぐについちゃうんじゃないの?
ようやく勾配が落ち着いたのは公民館らしき建物の駐車場に入った時でした。
まさかの行き止まりかと焦りましたが、緩やかなカーブで建物を避けていきます。
そしてじわじわ迫る山際。
最初から舗装なんて期待してはいませんが、それがどのタイミングで来るかは重要なところ。
けっこうもってる方だとは思いますけど・・・。
舗装がコンクリに変わった・・・
まだもう1段階粘るか。
なかなかドキドキさせてくれるじゃないか・・・

この時点で結構な絶景なんですが・・・

標高は50mほど。
しかし眼下の海抜はいっきに0m近くになる為、非常に高く感じます。

舗装終了・・・

しかしまだ自動車も走れるレベルです。
せめてこのレベルを維持してくれていれば・・・。
いや、登山道レベルでも・・・、獣道レベルでも・・・
地図にも記載のない小さな暗渠があるようで、沢が抜けていました。
一応覗いてみましたが、ただの管渠でした・・・。
ああああああ、いよいよヤバくなってきた。
期待というのは淡く裏切られるもの。
探索において、ああだったらいいなとかこうだったらいいなとかいう期待は、大抵の場合逆を行きます。
あんまり見たくないものも・・・。
あるってことはいるってことだからね・・・。
地図上では徒歩道となっていますが、まだ辛うじてのダブルトラックが続いています。
この辺りまではまだ車が通るようです。
これは期待できるな・・・。
現在は笹薮にしか見えない場所にも石垣が残っていました。
これは擁壁というよりは、畑か田んぼのあとでしょう。
かつて挙野集落はこの辺りまで続いていたということがわかります。
両側からものすごい圧迫感を感じます。
僕に残された陣地はもはや正面の軽トラロードのみ。
以上密集している藪が壁さながらの圧力を持ってプレッシャーをかけてきます。
僕に希望を与えてくれる人工物だった送電線が藪の中に消えていきました。
これで保線用道路としての役割も消えたわけか・・・。
そういえばいつの間にか舗装が復活してました。
写真見て初めて気づいたよ・・・。
そして恐れていた瞬間は唐突に訪れます。

嗚呼・・・

この道往けば act2

福井県を中心とした。酷道、廃道、旧道、峠、隧道の探索ブログ

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